2024年12月のiDeCo(個人型確定拠出年金)制度改正により、企業年金加入者の掛金上限額が引き上げられるなど、より利用しやすい制度へと進化しました。
本記事では、こうした制度改正を読者や顧客に向けてどのようにわかりやすく、行動喚起につながる形で伝えていくべきか、金融機関・メディア関係者向けにコンテンツ制作のポイントをレクチャーします。
1. 法改正の「変化」を“比較”で伝える
制度改正を伝える際は、「これまで」と「これから」の比較を明確に打ち出すことで、読者の理解が格段に深まります。
項目 | 改正前(~2024年11月) | 改正後(2024年12月~) |
---|---|---|
企業年金加入者のiDeCo掛金上限 | 月額1.2万円 | 月額2万円 ※ただし月5.5万円の合算上限あり |
企業型年金加入状況の確認方法 | 勤務先に「事業主証明書」を申請・提出 | 申請不要。企業年金プラットフォーム経由で自動確認 |
企業側の対応 | 加入・転職時に証明書発行が必要/年1回の現況確認 | 両手続きが不要に。企業側の業務も軽減 |
加入手続き | 一部会社員は加入に手間がかかる | すべての人がオンラインでスムーズに加入可能 |
✅ ポイント
- 表形式にすることで、制度の「改善ポイント」が視覚的に伝わる
- 数字の変更や手続き負担の軽減は、読者が“自分にも関係ある”と感じやすい
iDeCoは「ハードルが高い」と感じていた方も多いと思います。今回の法改正で、その“壁”がグッと下がったことは確かです。今まで迷っていた人たちにこそ、やさしく一歩を踏み出してもらえるような情報発信が必要です。
2. 「なぜ今、iDeCoか?」の文脈を添える
読者は「制度が変わったこと」そのものよりも、「なぜそれが自分に関係あるのか?」に関心を持ちます。文頭やリード文では必ず背景や社会的文脈を示しましょう。
例:
- 老後資金2,000万円問題
- 新NISAとの併用可能
- 勤務先による制限が緩和された今がチャンス
将来の年金がどれくらいもらえるのか不安な方、多いですよね。だからこそ、今のうちに「自分年金」を作っておくことが重要です。
iDeCoは“老後にそなえる行動”として、まさにタイムリーな制度。伝える側としても「今始める理由」をていねいに言葉にしていきたいところです。
3. 読者に「自分ごと化」させるストーリー設計を
金融商品や制度の説明は「仕組み紹介」で止まりがちです。大切なのはユーザーが動く構成にすること。
ストーリー展開例:
- 「会社員のAさん」→企業年金ありでこれまでiDeCoを諦めていた
- →制度改正で掛金上限UP+申請不要に
- →加入を決めた理由と見込まれる税メリット
こうしたペルソナベースのシナリオがあると、理解も関心も深まります。
「これ、私のことかも」と思ってもらえるかどうかが大切です。ストーリーに共感してもらえれば、「制度説明→理解→納得→行動」への流れが自然につながっていきます。
4. NISAとの比較・併用メリットを明確に
新NISAの浸透が進む今、iDeCo単体ではなく、NISAとの違いや併用メリットに触れると読者の納得感が高まります。
比較軸 | iDeCo | 新NISA |
---|---|---|
目的 | 老後資産形成 | 資産運用・中期資金対応 |
税制 | 所得控除・運用益非課税・受取控除 | 運用益非課税 |
引出し | 原則60歳以降 | いつでも可能 |
例:「iDeCoで将来に備えながら、NISAで中期の資産形成を行うのが賢い選択」
▶ FPの視点:NISAとiDeCo、両方使ってる方、意外と少ないんです。でも、それぞれの特徴を生かせば“資産形成の両輪”としてすごく効果的です。まずは、「どう違うの?」をやさしく整理してあげましょう。
5. よくある誤解・注意点にも触れる
読者が疑問を抱えたまま離脱しないよう、「FAQパート」や「注意点まとめ」も入れておきましょう。
よくある質問例:
- 「60歳まで引き出せないって本当?」
- 「企業年金と併用できるの?」
- 「専業主婦でも加入できる?」
「制限が多くて使いにくそう」と思われがちですが、逆に“引き出せない=確実に老後のために残せる”という見方もできます。こうした「誤解」を払拭する説明が、信頼を生む第一歩になります。
6. コンテンツ企画の基本フォーマット(テンプレ)
- リード文:背景と「今知るべき理由」
- 改正の概要とポイント整理(比較・図解)
- メリット解説(税制・手続き・NISAとの比較)
- どんな人におすすめか(ペルソナ設計)
- 加入の流れ・注意点
- Q&Aまたは相談導線(CTA)
まとめ
制度の情報を届けるとき、大事なのは「制度を伝える」ことそのものよりも、“読者の背中をそっと押す”ような発信です。
iDeCoの法改正は、まさにその後押しをするチャンス。金融機関やメディアに携わる皆さんも、ぜひ「これからの暮らしを支える情報」として、あたたかく・ていねいに発信していただけたらと思います。
赤上FP事務所では、そんな想いに寄り添いながら、制度解説や資産形成支援のコンテンツ制作をお手伝いしています。
一人でも多くの方が、自分の未来を前向きに描けるように——そのきっかけづくりをご一緒できたら嬉しいです。