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新NISAは「若年層×積立」で動く|最新統計から読み解く活用のヒント

2024年から始まった新しいNISA制度。開始から1年が経過し、その利用実態が徐々に明らかになってきました。特に注目すべきは、つみたて投資枠の利用率が非常に高く、若年層を中心に投資の裾野が広がっている点です。これは単なる税制優遇の話にとどまらず、生活者の「これから」に向けた意思表示とも言えるでしょう。

本記事では、金融機関・金融メディアの担当者に向けて、この統計データをどう読み解き、どのように企画やコンテンツに落とし込むべきかを提案します。

参考元:日本証券業協会「「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」

新NISAの利用動向から見える「生活者の投資観」

日本証券業協会や金融庁の最新統計によると、2024年の新NISA利用者のうち、実に78.9%が「つみたて投資枠」を利用しています。さらに、20代以下では91.6%、30代で89.4%と、若年層の利用率が非常に高い傾向にあります。

この数字から読み取れるのは、「投資はコツコツ、日常的に行うもの」という意識の定着です。かつての一発勝負的な投資イメージから、計画的な資産形成手段として投資を捉える層が着実に増えていることが伺えます。

また、全体の約40%以上を女性が占めており、投資は一部の富裕層や男性だけのものではないという、多様化も進んでいます。

制度理解を助ける「比較表」の活用

制度の本質を伝える上で有効なのが、視覚的に理解できる比較表です。以下に、新旧制度および2つの投資枠の違いを整理しました。

● つみたて投資枠と成長投資枠の比較

項目つみたて投資枠成長投資枠
年間投資上限120万円240万円
対象商品長期分散投資向きの投資信託(金融庁認定)上場株式・ETF・REIT・投信など幅広い商品
非課税期間無期限無期限
投資スタイルコツコツ積立(初心者向き)自由な一括投資(中上級者向き)
向いている人投資初心者、長期資産形成中長期で大きく資産形成したい人

この表から分かるように、「つみたて投資枠」は投資初心者や若年層に適した、コツコツ型の資産形成向け制度であり、一方「成長投資枠」は株式やETFなど自由度の高い商品で大きな成長を狙いたい中上級者向けの制度設計です。利用者の経験値や目的によって、使い分ける視点が重要です。

● 旧NISAと新NISAの比較

項目旧NISA(〜2023年)新NISA(2024年〜)
年間投資上限一般NISA:120万円/つみたてNISA:40万円全体で360万円(つみたて:120万+成長:240万)
非課税期間一般NISA:5年/つみたてNISA:20年無期限
口座数一人1口座/一般 or つみたて の選択式両枠併用可能(1口座)
商品制限一般NISA:広範囲/つみたて:限定より明確に2枠に分離(重複不可)
移行・併用年単位での選択恒久制度として同時運用が可能

新NISAでは非課税期間が「無期限」となったことが大きな変更点です。さらに、旧制度ではどちらか一方しか選べなかった投資枠を、現在は併用できるようになっており、より柔軟かつ長期的な投資設計が可能になりました。この点は、制度の特徴を正しく理解した上で、ライフプランに応じた投資戦略を組み立てる上での大きなメリットとなります。

若年層・家族・シニア層──ペルソナ別に見る新NISA活用法

新NISAは世代ごとの関心や目的に合わせた訴求が重要です。以下に、代表的な3つのペルソナとその活用イメージを簡潔に整理し、年代ごとの背景や動機も補足します。

20代社会人(入社数年目の独身層)

  • 月1万円からのつみたてスタートが可能。
  • iDeCoより柔軟性が高く、非課税メリットを実感しやすい。
  • 自動積立設定で“ほったらかし投資”がしやすい初心者向け枠。

    社会人としての生活が安定し始めたタイミングで、「何か始めたい」「将来に備えたい」という意識が強まりやすい年代です。資産形成の“最初の一歩”として、低リスクで始められるつみたて投資枠との相性が良いのが特徴です。
  • 30代子育て世帯(教育費・住宅ローンとの両立層)
    • ジュニアNISA終了後、親のNISAで教育費準備を継続。
    • 夫婦でW口座を活用し、世帯全体での資産形成も可能。
    • 将来のライフイベントに備える「目的型投資」に適している。
    • 子育てや住宅ローンなど支出が重なる時期にあたります。将来の学費や老後資金に備えて、家計のなかから「できる範囲で積立を続けたい」という層が多く、つみたて投資の中長期的な非課税メリットが訴求点となります。
  • 50代以上の再設計層(退職準備・資産の出口戦略)
    • 旧NISAから新NISAへ移行し、非課税期間の無期限化を活用。
    • 成長投資枠でインカム(配当・分配)投資を実践しやすい。
    • 自由度の高い出口設計ができるため、老後の生活資金管理に役立つ。 → 退職や年金受給を見据え、「資産をどう取り崩すか」が関心事となる世代です。売却タイミングを自分で調整できる無期限の非課税制度は、出口戦略に柔軟性をもたらします。安定した配当収入を得たい方にも適しています。

それぞれのニーズに合わせたストーリー設計が、新NISAの価値を「自分ごと」として届ける鍵となります。

まとめ

新NISAの利用統計は、制度の実績であると同時に、未来を見据える生活者の意志の表れでもあります。 赤上FP事務所では、こうした生活者の視点に寄り添いながら、実用的かつ“自分ごと”に落とし込める金融コンテンツを企画・制作しています。

「なぜ、今、投資をするのか」という問いに寄り添い、その答えを共に描く──それが、これからの金融コンテンツの役割です。

ご相談・執筆依頼などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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